日本語指導者養成講座の記録
第4回講座レポート(2012-06-17)

教科書の分類
★叙述型…どこで話しているのか、設定がよく分からない会話。
これは何ですか。これはペンです。あなたは昨日何をしましたか。まるで尋問のよう。
★非叙述型…どういう場面か設定がはっきりしている。
★「みんなの日本語」は、叙述型と非叙述型、両方織り交ぜてある。
日本語だけでなく、英語の教科書もそうなのだが…
教科書の目的が「話せるようになること」じゃなくて、「文章の作り方を教えること」だから、
勉強しても使えるようにはならない。
可能形を教えるところを読んでも、可能形の作り方が分かっただけ。使えるようにはならない。
言語教育の目的が果たせていない。→これは先生ががんばるところ!
教材とは?…何でも教材になる!(だから集めすぎるとゴミみたいになる!)
文字…教科書など
音声…駅のアナウンス、留守電、コールセンターの「お問い合わせの方は1を、押してください」などというガイダンスなど
映像…映画など
★教材いろいろ
フラッシュカード、人形、レアリア、模型、パンフレット、地図、看板、案内板、ニュース、アナウンス…
フラッシュカードとは?
フラッシュとは、カメラのフラッシュのように「瞬間的に」「まばたきをする」という意味。
パッと出せるカード。パッと出してサッと答える一問一答ができる。サッとめくるためには、持ちやすく、めくりやすい厚紙がいい。
絵カードと文字カードとがある。
「みんなの日本語」の絵カードは高い!なんと6万円。半分のサイズだと3万円。アマゾンの中古品なら安いものもある。
人形とは?
紙製の人の形のもの。(先生は、トイレの「人」マークのような簡単なものを出した。)
これにAさん、Bさんなど書いて生徒に渡すと、例文を使って練習するとき、AさんBさんになりきってくれる。
人の形の紙2枚に割り箸をはさんで、割り箸を「持つところ」にしたもの。
人形のほか、厚紙で「○」「×」をつくって割り箸をつけたものも便利。
「行きます」のカードを持って、割り箸の「×」を添えて否定形「行きません」を答えさせる練習など。
レアリアとは?
実物のこと。鉛筆やらノートやら、説明するよりも実物を見せた方が分かりやすい。
模型とは?
飛行機やら新幹線やら(持って来ようがない)
「飛行機」という単語の説明だけでなく、飛行機の模型(おもちゃ)を使って、
「空に飛びます」と「空を飛びます」の違いを説明する、というふうにも使える。
それに、例えば本物のマイクよりも、おもちゃのマイクを持っていくと生徒が楽しんでくれる。
中にチョコが入ってる、おもちゃのマイク、あの中身を取り出して授業に持っていく。
パンフレット・地図
たとえば旅行のパンフレットを使って、中・上級のクラスで旅行の計画を立てる練習。
地図は冊子ではなく1枚のペラッとしたものが便利。
「どこへ行きますか」「何で行きますか」ワイワイと練習で盛り上がる。
ニュース
受身が多い。いつ誰がどこでどうなった。
「車にひかれました」「殺されました」などと言うが「車がひきました」「殺しました」とは言わない。受身の練習になる。
アナウンス
電車の乗り換えのアナウンスが聞き取れるように練習。学習者のニーズを満たす。
★役に立つアドバイス
例文で変わった名前を使わない。
きょうこさん、たろうさんなど、いつも使う名前を決めておく。
急に珍しい名前を使うと、人の名前なのか物の名前なのか、なんだかわからなくて学習者が困る。
小さい子供は受身を使わない。能動文で話す。
例えば、「お兄ちゃんがなぐったー」「お兄ちゃんがケーキ食べたー」など。
大きくなると「お兄ちゃんになぐられたー」「ケーキ食べられたー」などと言うようになる。
でも、最初は能動文から覚える。いきなり受身文から覚えるのではない。
小さな子供が、まさか「雨に降られたー」などとは言わない。「雨が降ったー」と言う。
(※迷惑を表わす受身。外国人にはこれが難しい。)
だから、外国人に教えるときも、まずは能動文から。
日本の猫と韓国の猫
日本人に好きな動物はと聞くと、1番が犬、2番が猫。
しかし韓国では、1番が犬、猫は11番目。
猫は怨念を持つ不吉な動物とされており、あまり猫好きの人がいない。
日本語には「猫の手も借りたい」「猫も杓子も」など、猫の登場することわざ・慣用句が多い。
韓国人には猫の愛くるしさがなかなか分からないようで、覚えるのが難しいらしい。
画材
色鉛筆は、色の粉がはがれ落ちて、色が薄くなってしまうので、あまりよくない。
誤解を防ぐ
「大きい/小さい」、「速い/遅い」などは、同じものを対比させよう。
たとえば、早い車と遅い車など。
「新幹線は速いです。自転車は遅いです。」といって新幹線の絵と自転車の絵を見せた場合、
「自転車は日本語で『オソイ』と言うのか〜」などと誤解してしまうおそれがある。
「春/夏/秋/冬」も同様。
桜の絵を見せて「これは春です」と言ったら
「あれは『ハル』という木だな」と誤解させてしまうので、同じ景色で対比させる。
同じ桜の木のある景色で、
「春」は桜の花が咲いていて、「夏」は同じ桜の木が、ピンクじゃなくて緑色…という具合に。
どっちを見るのか?
「あげます」の絵なのか、「もらいます」の絵なのか。
「教えます」の絵なのか、「習います」の絵なのか。
どちらを表わしているのか分からない絵は困る。
どちらかにだけ色を塗って、もう一方は色を塗らないとか、矢印やマル印で示すとか、工夫が必要。
西洋は横書きで、左から右に見るので、西洋の絵画は左から見るように描いてある。
だからモナリザも左(向かって左)を向いていて、左から見るようになっている。
日本は縦書きで右から左に読んでいくので逆である。
美術館の順路も、
西洋の美術館は左から順に見るようになっていて、
日本の書や生け花などは右から順に見るようになっている。
大きく!
テレビより映画の方が印象に残る。教材の絵も大きい方がいい。
絵だけ!
絵カードには文字を入れず、絵だけで説明するのが望ましい。
例えば「京都」と書かなくても、山に「大」と書けば京都の景色だと分かる。
法律に注意!
コピーは著作権に注意しよう。
写真を撮って教材にするときは肖像権に注意しよう。
景色の写真に人の顔が入ってはいけない。
それどころか、ただの山、ただの森でも、看板など何らかの目印によって
「あ、これはウチの森だ」と分かるような写真は肖像権の問題がある。
(ボランティアで教えるときの教材ならいいけど、カネにしたらダメ。)
★学生が作ったフラッシュカードの紹介
「AとBと、どちらが〜ですか」の練習
1枚のフラッシュカードにコーヒーの絵と紅茶の絵を描く。
それと同じように
「食べます」と「話します」の絵を書いて
「食べながら話します」など、「〜しながら〜します」のカードとか、
「食べたり、話したりします」など、「〜たり〜たりします」のカードとか
「〜のようです」の練習
「猫」の絵カードと「猫のような顔の人」の絵カードを重ねて、交互に見せる。
「きょうこさんは、猫のようです」
同じように
「顔が丸くてボールのようです」
「山のように仕事があります」
「子供の手はもみじのようです」
「かばんが重くて石のようです」などなど。
いろんなレベルの学習者に教えるとき…
真ん中のレベルの人に合わせると、レベルの高い人は、つまらないので不満。
レベルの低い人は、ついていけなくて不満。そんなときに便利な教材とは?!
表などをネタにして、それを元に、好きなように例文を作らせる。
たとえば、A店、B店、C店の、たまごはいくら、キャベツはいくらという表をもとに、
「A店はキャベツが安いです」「A店はB店より○円安いです」などというふうに。
こうすればレベルの高い人も低い人も満足できる授業になる。
漢字
さんずいへん、木へんなど「へん」(左側)のカードと、つくり(右側)のカードを組み合わせて
「いや、そんな字はないよ」などと、漢字の学習。
接続詞
動詞のカードを何枚か用意して、
「まず〜をします。次に〜をします。そして〜をします。最後に〜をします。」の練習。
こういう接続詞を使えない人がいますよ。
「まず〜をします。あと、〜をします。あと、〜をします。あと、〜をします。」
日本人の学生がこれを言うのだ!日本の学生にも教えたいところ。
(レポート:ナヤ)