日本語指導者養成講座の記録

第3回講座レポート(2012-06-10)


 6月10日、3回目の日本語指導者養成講座が開かれました。今回のみ会場は草津のアミカホールでした。テーマは「さまざまな教え方」です。

日本語が上手とはどういうことか?
それは、日本語を使っていろいろなことができるということ。買い物ができる、頼みごとができる、病院で症状が言えるなど。

 上記のような導入で中川先生の講義が始まりました。 教科書だけを使った型どおりの学習では日本語の実用能力は身につきません。昔の英語授業のような「How are you?」「I’m fine」ではそれ以上の会話は進展しません。日本語学習でも同様で、ペンを手に持って「これは何ですか?」「それはペンです」というパターンは実用的ではありません。知っていることを聞くなど実際の会話にはありえないからです。

 そこで、今回のテーマである、さまざまな教え方、についてとなります。

1. インフォメーションギャップを利用した練習方法
  個人が持つ情報量に差がある状態で会話をさせる、というものです。
・物の一部を拡大した図を見せて「これはなんでしょうか?」と複数の学習者に聞く。「それは何々です」とか、「それは違います。私は〜だと思います。」など実用的な会話になると思われます。
・2つの絵を並べ間違い探しをさせ、どこが違うかを言わせる。
・地図を元に「〜はどこですか?」と道順を聞き、説明をさせる。
など。

2. ロールプレイ
  意味のある場面と状況を与え、学習者にペアで役割を演じさせて話していく練習方法です。
例えば、AさんはBさんの都合を聞いて映画に誘う。
一方Bさんは都合の悪い曜日があり、それ以外の日なら行ける、ということをAさんに伝える。

3. ゲーム
  例としてビンゴを使用した練習方法を紹介されました。
  辞書形の動詞を数十個準備しておき、学習者はその中から16個選んで「て形」にしてビンゴの升目に書く。
その後に教師はて形を読み上げる。
升目に出てきて、て形にした答えが合っていればその升目をチェックできる。

4. インタビュー
  インタビュー項目を決めておき、生徒間で行わせる。
例えば「はしを使います」「ひらがなを読みます」を可能形にして質問する、という課題を与えます。

 上記以外にも、資料を配っていただきいくつも事例を紹介してもらいましたが、ここでは書ききれませんので割愛します。

 私が聞いていて参考になったのは、複数の学習者に教える場合の方法です。
中川先生は例えとして「10人の生徒に60分授業で教える場合、順に一人ひとりに話させようとすると、一人あたり6分しか話す時間は取れません。
教師→生徒や生徒→教師だけでなく生徒⇔生徒で練習をさせればもっと生徒が話す時間が取れます」ということを言われました。
そういう意味ではさまざまな教え方の事例は役に立ちました。
教える方はしゃべりすぎないこと、教材をあらかじめ準備しておく、あるいは頭に入れておくことが肝心だ、と思いました。

  最後に中川先生からのエピソードをひとつ。
「配布された資料内の間違い探しの絵は大学の教え子に描かせましたが、違いが17個もありこれは多過ぎました。
人間が一度に記憶できるのは7個と言われており、7個までと指示するのを忘れていたためです。」
ちなみに当日配布されたさまざまな資料は中川先生ご自身の著書から取られたものでした。

 次回は「教材をつくろう」です。

                      (ばってんT村)